「大学病院の奈落」
著者:高梨ゆき子 発行:講談社 発行日:2017年8月24日
最近読んだ記憶に残った本 その1です。
図書館でたまたま目に入り、借りて読んでみた本です。
昔、私の弟も大学病院に入院、闘病の末亡くなったという経緯があり、
興味を引きました。
この本の帯にはこういう一節が記されていました。
未熟な技量で高度医療に挑む野心家医師と、ポストに執着する教授たちが引き起こした惨劇。
なぜ変わらないのか。なぜ変われないのか。終わりなき白い巨塔ー
群馬大学医学部付属病院で相次いで起こった、ある医師が起こした手術死、
今の段階ではまだまだ難易な肝胆膵外科手術分野での腹腔鏡手術を強行した結果、何例もの医療事故が問題になり、その過程を克明に記録していき、今の医療の問題点を深く探っていくという内容になっています。
第5章の遺族の物語は、身内のこともあって、人ごととは思えない緊迫感で読みました。
その手術で命を落とした人達やその家族がどんな気持ちでそれを受け止めていったのか身につまされる思いになりました。
1人ではなく18人もの人が亡くなっているこの医療事故、どこかには「手術工場」っていう言葉もあって、
人の命を何だと思っているんだろうと
怒りがこみ上げてきます。
私の体験
私も7~8年前に胆石の痛みで受診し、腹腔鏡手術で胆嚢摘出を受けたことがあり、幸い予後はいいんですが、この本を読むと今では胆嚢摘出は腹腔鏡手術が一般的に行われているそうで(その当時は知らなかった)、安堵しましたが、
ほんとうに患者はあまり医学の知識もないことから、医師にそう言われたら、そうなんだと納得してしまう傾向はありますね。
医者と患者は対等ではなく、医者優位なのです。
だから医者の言われたことを受け入れるしかない現実がありますね。
弟の場合
私の弟も20年以上前になりますが、普通の歯科で歯の治療時に、舌にちょっと気がかりな部分があるので、
精密検査をするようにと言われて通うことになったある県外の大学病院を受診したのが始まりでした。
そこで舌がんと診断され、最初の手術での安堵感はそう長くは続かず、その後約3年程入退院の繰り返し、壮絶な闘病の末、結局42歳の若さでこの世を去りました。
弟は銀行マンで、結婚もし、一番仕事にものってる時で、志半ばで死んでいった本人はどんな思いだったのだろうかーきっと無念だったんだろうと思います。
食事もほとんど口にすることができず、あの大学病院の殺風景な病室で何を考えていたんだろうってと思うといたたまれません。彼にとってはほんとうに残酷でした。
あの頃はインフォームドコンセントなどが、あまり言われてなかったこともあり、私たち家族にもあまり説明がなかったようで、
後になって、こちらからお願いして今の状態がどうなのかを聞いたら、その時になって初めて担当の医師から、もう4期で末期だと告げられ、愕然としたことがあったと記憶しています。
そういう訳で今でも大学病院という言葉に拒否感を抱いてしまいます。
“白い巨塔"を繰り返さないために!
この本に戻りますが、この事故をきっかけにして、もっと医療安全対策がしっかり行われ、医療従事者は、患者にしっかりと
インフォームドコンセントを行って、実際の診療時には特定の医師だけに責任や負担がかからないような医師同士、診療科間の垣根をはずして情報共有をするようなチーム医療を目指していくことが、とても必要なんじゃないかと思いますし、
そして患者側サイドが、もっとセカンドオピニオンが容易にできるような制度を作ってもらえたらと思います。