「山中静夫氏の尊厳死」
著者:南木佳士(Nagi Keishi) 発行:文春文庫 発行日:2004年2月10日(第1刷)2019年7月15日(第2刷)
最近読んだ記憶に残った本 その2になります。
これは妹がくれた本です。
妹は自分が読んだ本を次々私に持ってきてくれるので、助かります。
そして妙なことに偶然が重なっていました。
妹が話してくれたことですが、その日はちょうど妹と一緒に小椋佳のライブを見に行く所だったのですが、
最近たまたま買って読んだこの本が、近々映画化される予定になっていて、その主題歌を歌っているのが小椋佳だったのです。
こんな偶然ってあるんですね。
この本の末尾に小椋佳氏の解説も載っていました。
本のストーリーは、ある肺癌の末期ガン患者と医師とのやりとりが主な内容ですが、患者本人が尊厳死を望んでいて、医師に、苦しまずに死にたいと告げ、『最期のところで、楽にするような薬を使ってもらえますか』とお願いする。
診察を受けた病院とは異なる故郷にある病院に転院し、どうせ死ぬのならと、その故郷の地で自分の墓を作りながら、闘病していく患者の姿。
担当することになった医師は今までに300通以上もの死亡診断書を書いてきて、死者を看取りすぎて相当な疲労感を感じている・・そんな中転移性のある肺癌で余命3~6ヶ月と思われる患者と出会い、
本人の切なる希望を受け入れ、家族と共犯の安楽死ではなく、あくまで本人の意志を主体にした尊厳死というものに真っ向から挑んでいく過程で、
治療に苦心し、いかに尊厳死というものを確立していくのかを探りながら格闘し、
ついには自分の身体まで壊していくほどに~
作者は、以前内科医で、やはり医療現場での細かいリアルな描写は医師ならではの表現だなあと思いました。
死という不条理な出来事はふところを大きく開いてすっぽり受け止めるしかなく、理屈で遠ざけようとすればするほど背後に大きな影が忍び寄るものなのだ
この本より抜粋
尊厳死というものがいかに難しいことであるのかこの小説ではほんとうの所は見えてきませんが、静かな淡々とした表現で読みやすく、読者を惹きつけていく文体でした。
色々と考えさせられるところがあり、自分の父や母の亡くなる時を思い起こさせるきっかけになりました。
尊厳死や安楽死の問題を改めて考える機会に出会い、人生の最終段階における医療のあり方が、その人の最後を決定していくことの怖さ、危うさを感じてしまいます。
日本は「安楽死」と区別して、生命維持装置の中止を「尊厳死」と呼ぶことが一般的。
安楽死・尊厳死の現在 松田 純著
世界的には安楽死や自殺介助も含めて「尊厳死」と呼ぶ。
自分の死に方を自分で決めるというのは現代では難しいことです。
せめて最後は苦しまずにすーっと息を引き取れればと誰しも思いますが・・・
たとえば判断が弱っていてコミュニケーションもできない意識不明の状態でどんな治療選択をしていくのか、患者が・・残された家族が・・?
安楽死の問題も様々あり、日本ではまだ法律で容認されていないようですが、そのうち変わっていくかもしれませんね。
死に方は生き方というように、死に方を考える前にまずは今の生き方を真摯に見直していくことが目下の課題になりそうです。