本「82年生まれ、キム・ジヨン」

2019年12月10日

チョ・ナムジュ著 斉藤真理子訳 発行日:2018年12月10日

韓国で100万部突破したベストセラー小説で女性が遭遇した困難や差別を描いているということで、
興味をひきました。
読者層はたぶん私たちシニアではなく、私たちの娘世代、30~40代だと思いますが、読んでみようと思いました。

内容

82年生まれのキム・ジヨンという女性の一般的な普通の女性の物語ですが、最初このキム・ジヨンが重度の育児うつにより、
ある日突然憑依し精神を破壊されてしまうほどに追い込まれていく様子が書かれています。
そこからある患者のカルテのようなスタイルを取って、彼女の生い立ちが韓国の歴史に沿って描かれていき、最後は現代の2016年に戻り、それでも彼女の症状が治ったという訳でもなくカウンセリングは受け続けているようですが、中途半端な感じで終わっています。
最後の終わり方に、えっ?という感じは受けましたが、著者や訳者のあとがきを読んでいくと、読者に問題提起を促しているということで納得しました。

キム・ジヨンの姉、キム・ウニョンの場合

キム・ジヨンの母、オ・ミスク氏は、3人の子供がいて(2女、1男)、長女キム・ウニョンに就職活動の際、公務員や教師を進め、キム・ウニョンは他にやりたいことがあって、最初は拒絶していたのにだんだん母に懐柔されていき、結局教育大に入学することになるのです。でも母、オ・ミスク氏はあとで自分の意見を無理に押しつけたことを後悔するのですが、逆にキム・ウニョンは教育大に入る意志を固めたようで、納得して教師の道を選んだようでした。

公務員や教師を進める所は、自分の母のことを思い出しました。
私の母も、あの頃私に教師を進めていて、まあ父が高校の教師だったこともあって、結婚して子育てしながら働くには休みも十分あって良い職場だからと言って、私もその当時自分がこうしたいと言う目標がなかったので、結局親の言う通り教育大に入学してしまったのですが、私は教師にはなりませんでした。
でも母がよく言っていたのは、女でも4年生の大学に行くべきだって言って、妹と共に4年生大学を出してくれたのは、今思えば有り難かったと思います。
母はその頃、自分が夫から、何の稼ぎもないって言われるのがとても悔しかったみたいで、私たちには大学を出て、ちゃんと一人前に稼げる仕事を持って男性同様自立して欲しいという強い思いがあったのではないかと思います。母が亡くなってみて母の強い思いを最近特に感じるようになりました。

キム・ジヨンの母、オ・ミスク氏

このお母さんは、たくましい人で、夫の退職後、投資をしたりして、その利益で商売を考え、フランチャイズのパン屋をしたり、おかゆ屋をしたりで材を成しマンションまで買って家族に貢献するほどのたくましさを持った人で、特殊と言えるようです。
日本でも今までの普通の母、私達の親世代では、ほとんどが専業主婦で職業を持っていた人は少なく、私の母も専業主婦で、でも母は自分は医者になりたかった等と言ったりしてました。母は、結婚前は実際洋裁学校に行って学び、洋裁をする店を持ちたかったみたいに言ってました。それでも家では洋裁や和裁をして、少し内職のような仕事をしていたようです。私は普段着る服や学生時の制服はすべて手作りでした。その頃は節約で手作りだったと思いますが、今は贅沢に思われるでしょうが・・

キム・ジヨンの場合

大学に進んだキム・ジヨンは両親の家に住み、たまに家庭教師のアルバイトをする恵まれた学生生活を送った。
只サークル活動では、女子が会長になれないような差別が存在していたし、就職活動ではかなりの男女差別を受けることになる。
指導教授に「女があんまり賢いと会社でも持て余すんだよ。」と言われ、推薦や面接で苦戦する様子が書かれている。
彼女は元々食品メーカーに入りたくて、50社を越える会社に願書を出すが、書類選考ですべてだめ、たまたま間違って願書を出した会社にやっと書類審査が通ったと思えば、それでも面接で落ちてしまう。
そんな中友人の幼なじみで、知り合って素敵な彼氏ができたのは幸運といえるだろう。その後ある広告代理店に運良く合格通知を受けることができたが、実際会社に入ってみると、女性だからという理由で、色んな差別が待ち構えている。そして結婚して出産、更に職場と育児のはざまで苦労が度重なっていく。そしてついに精神のバランスを崩してしまう。

日本でも韓国と同じように最近女性の社会進出を社会も進めていて、めざましい勢いですが、まだまだ職場では色んな差別があるようですし、ましてや女性が出産、育児をしながら働いていくことにどれだけの苦労があるのか、結婚し子供が生まれて、女性は色んな問題に立ち向かいながら、男性には分からぬ苦労を背負って日々頑張っていますよね。女性がこの世界で生きていく生きづらさ!
この本は女性についての問題を提起していますが、決して女性だけの問題ではないし、男性にも理解して、実践して欲しいことがたくさんあるように思います。男性にこそ読んでもらって意見を聞きたい本だと思います。

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Posted by マリリン